2015年度 年次報告


 

文責:高橋 直道

今年は一橋山岳部にとって変化の年であったといえるだろう。

 

ひとくちに変化といっても、予定していたものや想定外のものなど様々であった。そのような過渡期にあって、積極的に山岳部の運営に関わってくれた部員たちの惜しみない協力に感謝を述べたい。特に4年生が就職活動や資格試験に時間を割かねばならない中で、後輩たちの責任感ある参加がなければ、組織としての体を成すことができていなかったであろう。そして今年も暖かく学生を指導して下さったOBの皆様にも、この場を借りて感謝を申し上げたい。雪渓訓練などでのご指導や学生の山行計画へのアドバイス、さらには資金面での援助など、あらゆる形でご支援を賜った。われわれ現役部員は、先輩方のサポートがいかに心強いものであるかということを、その変化の中でより一層実感することとなった。

 

 

 

それではどのような変化があったのか、振り返っていきたい。

 

 

 

まず、山岳部の行動範囲が広がった1年であった。私は部長を務めることになったときから、その行動範囲を広げるということを標榜していた。私自身がもっと高い山に登ってみたいと感じ始めていたというのも理由の1つだったが、これは何よりも、昨年度までの活動を経て多くの部員が山のおもしろさに親しみ、みな同様にもっと高く、あるいは遠くという姿勢を見せるようになっていたためである。そしてFN短大等を通じて先輩方から指導していただいた結果、その旺盛な意欲に伴ってみんなが一定以上の経験値を積むことができていた。

 

最終的に北アルプス方面への合宿も夏冬とも行い、少なくない部員が参加することができるなど例年以上に盛んな活動となったが、それについて述べる前にもう1つの変化について触れなくてはならない。

 

 

 

今年山岳部に起きた最大の変化といえば、大幅な部員の増加である。2年生の内海、大矢が中心となって新歓に取り組んでくれた結果、10名程度だった部員の数が倍増し、現在は28名である。

 

学年も様々で、女子部員や留学生も増え、非常に賑やかな団体となった。これは大変喜ばしいことであった。しかしながら同時に、山行の中心をFN短大から学生自らが企画するものへとシフトしていくことと急激な規模の拡大が重なった結果、運営のあり方を変えていく必要に迫られた。

 

特に顕在化した問題は、バックグラウンドの異なる多くの部員たちの意見をすくい上げるために圧倒的に時間が不足したことであった。月一回のそこで部会は月1回から隔週にし、時間も50分から90分に伸ばした。これで十分なコミュニケーションをとりながら、あらゆる議題をクリアできるようになった。単純に顔を合わせる時間が増えたことで、部員同士の関係性も、以前にも増して深まっていったように思う。

 

 

 

さらに、人数の増加は役職の割り振りについて再考する機会ともなった。この数年間で徐々に人が集まり続けているという事情もあり、山岳部では部長、副部長、会計以外の役職というのが明確には設けられずにいた。しかし人数の増加に伴って、日々処理するべき作業も多くなり、効率的な組織が必要となった。そのため今年は、広報や備品管理など役職を新設して活動を行ってきた。その結果、古参の部員だけでなくほぼ全員にまんべんなく役割を割り当てる形となった。当然学年が異なる部員たちが同じ仕事を果たすこともある。これによって先輩から後輩へと組織運営のあり方が引き継がれやすくなったはずである。いい部分は受け継がれ、悪い部分は改善されながら山岳部がますます発展していくことを期待する。このように新たな部員の加入がよい刺激となって、組織としての枠組みがより強固になったと言えるだろう。

 

 

 

山行の内容も充実したものとなった。初心者の部員も多く加わったため東京近郊での日帰り登山も引き続き行った一方で、南北アルプスへの山行や、その他の地域でも泊りがけの山行に出掛けることが増えた。12年生も積極的に参加している。例えば昨年8月の北岳や、9月の表銀座、今年3月の屋久島などである。89名でテントを張って合宿という山行も珍しくなくなった。このような現在の山岳部の姿が昨年まで想像できただろうか。

 

とはいえ12年生に限らず、現在の一橋山岳部全体としてまだ経験は浅いと言わざるを得ない。安全という言葉が新部長の口から聞かれるのも、それを認識してのことだろう。3000m級の山々への挑戦に取り組む時間がたっぷりとある後輩たちが個人的には羨ましい限りだが、怪我や事故がなく登山を続けてくれることを祈るばかりである。