☆天気
1日目:曇り時々雨
2日目:曇り時々晴れ、雲量多し
3日目:曇り時々雨
☆コースタイム(撮影のため変則的なので、あくまで参考程度)
1日目:
10:00八方ゴンドラ10:30==11:00八方池山荘11:20==12:05第三ケルン(通過)==12:25八方池13:05==13:50扇雪渓14:15==16:00唐松岳山荘(テント泊)
2日目:
3:30起床—4:25唐松岳山荘==4:45唐松岳5:05==5:25唐松岳山荘7:00==9:50五竜山荘13:20==14:30五竜岳15:30==16:10五竜山荘
3日目:
4:30起床—五竜山荘6:50==8:00五竜岳9:40==10:30五竜山荘11:10==12:50大遠見13:05==14:00小遠見(通過)==14:30地蔵頭==14:35リフト乗り場
☆行動と感想
今回の山行は、BSフジの『絶景百名山』にOBの佐藤周一先輩が出演することになったご縁で、学生2名が撮影に同行させていただいたという形である。撮影を第一に山行が進むため、いつもと毛色の異なる山行で戸惑うこともあったが、とても貴重な体験をさせていただいたと思う。
本来撮影は7月の後半で終わる予定だったのだが、あいにくの悪天候により唐松・五竜のピークを踏むこともなく、見ることもできなかった。結局八方池山荘と唐松岳山荘を往復しただけで終わってしまったので、リベンジという形で臨んだのが今回の山行である。
【1日目】
朝起きると雨が降っており、前回の二の舞になるのではないかと思いながら家を出た。新幹線やタクシーを乗り継いで10時頃八方ゴンドラ前に到着した時、すでに雨はやんではいたものの、上方には雲がかかっていた。女性のディレクター、カメラマン2名、ボッカ2名(いわゆる「荷物運び」である)との挨拶を済ませ、いよいよ山行が始まった。
ゴンドラ、2つのリフトを乗り継いで八方池山荘に到着したのが11時であった。リフトが地面すれすれを上がっていくのがとても印象的であったが、短い空中散歩を楽しむことができた。
八方池山荘から八方池までは、定番のトレッキングコース(八方尾根自然研究路)として親しまれているため、木道が整備されており登りの面で特に困難なところは見受けられなかった。サンダルで登っていた観光客もいたくらいである。天気が良い日は白馬三山や五竜岳などの北アルプスの山々が間近に見えるのだが、この日は雲がかかっていて見ることはできなかったのは非常に残念である。またここで、カメラマンの方が持ってきていたドローンでの撮影が開始された。登っている自分の姿を上空から撮られるという経験は勿論初めてだったので、とても興奮したのを覚えている。この先ドローンの撮影のため待機という状況が多かったが、あまり気にならなかった。
八方池を過ぎると登山エリアとなり、観光客の数も減り、しっかりとした登山装備が必要な領域となった。下ノ樺、上ノ樺と登っていき、扇雪渓で休憩をとった。高山植物の咲く登山道は基本的に稜線の左側に作られており、幅もしっかりあったため登りやすい道であった。唐松岳山荘には16時頃到着した。いつもの山行とは違って、休憩時間(待機時間)がとても長かったため、コースタイムは大幅に超過している。
この日我々が宿泊した唐松岳山荘は、標高2620mに位置し、個室も完備している立地のよい山荘である。が、一つ問題があった。我々が到着した時間が遅めだったため、テント場がほとんど埋まってしまっていたのである。この山荘のテント場の高低差は非常に大きく、山荘から10分ほど降りた場所にやっとテントを設置することが出来た(山荘へ登るのには15分ほどかかる)。トイレに行くのにも往復30分かかってしまうので、ここにもしテント泊する場合は早めの到着が望ましいと強く感じた。また、水の値段も高い(500ml350円)ため、部の山行等でテント泊する際には不便なところが多い、というのが正直な感想である。
夕食は、内海主将考案のソーセージのトマト煮と、白米であった。ソーセージのトマト煮はトマト缶にソーセージとコンソメを入れて火をかけたもので、部員の間でもシンプルでおいしいと評判の料理である。部の夏合宿でも、メニューとして採用された。白米も、撮影の都合上蒸らす時間が足りず少しかたくなってしまってはいたが、きちんと炊くことができた。前回の撮影時緊張して焦がしてしまったが、何とか汚名返上はできたと思う。
前回の撮影ではここで一泊して引き返してしまったので、今回はそうならないよう祈りながら眠りについた。
【2日目】
四人用テントに二人で寝ていたので、今までになくゆっくりと寝ることができた。唐松岳山荘から唐松岳頂上までは20分ほどなので、日の出の時間に合わせて頂上へ向かうこととなった。唐松岳頂上と山荘の高低差は75mほどなので、登りもあまりきつくなく、楽に登ることができた。登っている途中、雲の切れ間から五竜岳山頂を一瞬だけ見ることが出来た。登頂後は日の出の時間まで20分ほど待ったものの、雲に隠れてあまり景色を見ることはできなかった。しかし、前回はピークを踏むことすらできなかったので、登頂できてよかった(『絶景』ではないが)。下りのある地点で、山荘とテントが遠いことを再認識し、ここにテント泊はもうしたくないなと思った。
テントで朝食をすませ、身支度を整えて山荘に戻ってきたのが7時ごろである。唐松岳山荘から五竜山荘へのルートは、最初の方に牛首と呼ばれる鎖場がある。落石に注意しながら進む必要があるが、想像していたよりも足場はしっかりとしていたためあまり苦労はしなかった。事故がよく起きているのは、油断が原因であろうか。ここでもドローンで撮影してもらいながら進んだ。五竜山荘に着いたのは10時前のことであった。
到着はしたものの、五竜岳頂上付近にはまだ雲がかかっていたので、昼過ぎまで山荘で待機することとなった。私は山小屋の中に入るのが初めてだったので、とても興奮した。五竜岳山荘は、テント場が山荘のすぐ近くにあり、水の値段も安かったので、部でこの山域を縦走する際はここに泊まるのが無難そうである。山荘なのに、『海猿』が全巻揃っていたのは謎だった。昼ごはんとして、山荘でカップラーメンとチャーハンをご馳走していただいたのも、強く印象に残っている。
13時過ぎ、デポした状態で五竜岳に向かった。五竜山荘からしばらくはなだらかな登りが続き、岩場にさしかかると鎖場があったが、傾斜は緩く難易度も高くなかった。しかし登り進めていくと、トラバースが多く見られ傾斜も増していった。ごつごつとしたダイナミックな山容が印象的で、佐藤さんは「男性的な山」と表現されていた。
山頂に着いたのは14時半頃だが、あたりは雲で覆われており、景色は真っ白であったため、一時間ほど待機した。一時間たっても残念なことに景色が変わらなかったため、翌朝再登頂することとなった。その日の夜はインスタントカレーを食べ、山荘を満喫した。
【3日目】
縦走の最中に布団で寝られる喜びを噛みしめながら目を覚ました。朝食を済ませると、五竜岳山荘に向かって再び出発した。ルートファインディングの練習も兼ね、坂本がトップを務めた。的確な指示を与えながら登っており、確実に以前より成長しているなと同期ながらに感じた。一時間後頂上に着いたものの、見えた景色は前日と同じであった。1時間半ほど待機してみたものの、ついぞ『絶景』を拝むことができなかったのは、とても残念である。
下りは、大遠見まで撮影班が同行する形であった。大遠見まではアップダウンが激しく、雨で道もぬかるんでいたので意外と時間がかかった。五竜山荘から大遠見と、大遠見から小遠見まではコースタイム上はほぼ同じ(約1時間20分)であるが、実際には大遠見まで1時間40分、大遠見から小遠見は50分ほどで通過した。前後で大きく歩く速さが変わったわけではないので、計画を立てる際には時間配分に注意が必要な箇所かと思われる。地蔵頭を通過し、いつもとは違った疲れを感じながらリフトに乗り込んだ。
【感想】
五竜岳は、佐藤さんが大学一年の初めての冬山合宿で登った山だという。少しずつ進んでいくのが精一杯で、一日数百メートルほどしか進めなかったそうである。今回は夏山の中を登っていったので、勿論そこまで苦労はしなかったが、大先輩の思い入れの強さを間近で感じることができた点で、いつもの山行とは違うとても良い経験になったと思う。
TVの撮影ということで、私自身もディレクターさんに質問を受けた。先輩についてどう思うか、今の山岳部についてなど、様々なことを聞かれて答えに詰まったこともあった。しかし、質問に答えていく中で、山岳部に対する自分の思いを整理することができたのは、この山行の最も大きな収穫であると考える。
今回の山行は佐藤さんに対する取材への同行であるため、佐藤さんが在籍されていたころの一橋山岳部について改めてお聞きする機会が多かった。雪山にも果敢に挑戦し、年百日以上山に登っていた時代の話をお聞きし、改めて偉大な先輩に教えていただいているのだな、と感じた。
現在の一橋山岳部は、最近まで部員不足に悩まされており、先輩方のご尽力でやっと部としての体制が整ってきたところである。大学に入って初めて登山を始める部員も多いため、部全体のレベルは昔に遠く及ばない、というのが正直なところだ。今回の山行でも、自らの技術不足を感じる場面が多々あった。まだまだ佐藤さんから学ばせていただくことは多く、昔のレベルまで部全体を引き上げるのは現状難しいといえるだろう。(勿論、昔と今では事情が異なることもあるが。年百日以上山に登るのは我々には難しい…。)
しかし、今の自分たちにも三年間一橋山岳部として活動してきたという自負がある。部全体のレベルは昔に及ばないが、様々な山に登ってきた。佐藤さんはじめ先輩方から教わる「伝統」を受け継ぎつつも、自分たちなりの一橋山岳部を形作っていきたいと考える。
『絶景』は見られなかったが、一生残る良い思い出となった。
牛首手前から唐松岳、頂上山荘を振り返る。(8/15 7:03撮影)
牛首手前から五竜岳を望む(8/15 7:03撮影)
五竜岳山頂(8/16 8:22撮影)
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