雪渓訓練(17/05/14)


 

行程

 

0437国立駅発→0833土合駅着→0900ロープウェイ土合口駅→0950訓練開始→1000雪上歩行訓練→1045滑落停止訓練→1040休憩→1200展望台へ歩行訓練→1250危険個所通過時のロープワーク講習→1330アンザイレン講習→1340ロープウェイ天神平駅前へ歩行訓練→1410ツエルト講習→1440訓練終了→1537土合駅発

 

 

 

共同装備

 

ロープ(12mm×50m×27mm×50m×1)、ハーネス×1、テープスリング(60cm×3120cm×1)、カラビナ×5、安全環付カラビナ×2、スコップ×2、スノーバイル(適量)、ツエルト×2、応急措置グッズ

 

 

 

個人装備

 

ヘルメット、ピッケル、アイゼン(6本刃以上)、手袋、登山靴、雨具(ゴアまたは冬用ハードシェル)、ロングスパッツ

 

 

 

訓練実施までの経緯

 

 昨年(2016年)から、三月会などでOBの方々とお話する中で、訓練実施の必要性について議論を重ねてきた。ここ2,3年で行く山のレベルは徐々に上がり、雪山に登る部員も増えてきた。この先も部の活動のレベルが上がっていくことは明白であり、安全面を考えると訓練実施は不可欠であった。2年前にはOBの方々が主導で雪上訓練が実施されていたが、参加者は数名にとどまっていた。(僕も参加していなかった。)そこで、5月には夏山の雪渓歩行を念頭に置いた訓練、そして冬山のシーズン前に冬山での技術を身につける訓練を実施することにした。そして、今回の訓練のアドバイザー(訓練内容の考案、実施場所の選定)はガイド資格を取得された佐藤さんにしていただくことになった。(佐藤さんは訓練実施1週間ほど前に現地の下見をしてくださった。この下見の結果を踏まえ、当初案に出ていた一の倉沢から天神平へと実施場所が変更となった。)

 

 共同装備については、不足していたものは今後の文登研の研修参加も見据えて購入した。また、個人装備で不足しているものについては、各自レンタルサービス(そらのした)等を利用して用意した。

 

当初の予定では、上級生は513日~14日の12日、新入生は13日の日帰りという日程だったが、13日の天候が悪かったため全員日帰りでの実施となった。

 

 

 

訓練当日

 

 国立駅始発で到着できる時間で集合時間を設定したので、自宅から間に合わないメンバーは部室に前泊した。土合駅はホームが地下深くにあり、改札口まで400段ほどの階段を登る必要があり、なかなかに疲れた。ロープウェイの土合口駅で佐藤さんと宮武さんと合流した。ロープウェイに乗り標高が上がってくると、深い霧に包まれ周囲の様子が見えなくなった。ロープウェイの天神平駅を出ると、辺り一面霧で真っ白で何も見えなかった。晴れていれば景色がいい場所だけに残念だった。レインウェアやスパッツなど装備の準備を整え、準備運動をした後、天神平駅から南西方向の斜面へ移動した。

 

 

 

〈雪上歩行訓練〉

 

 まずは、アイゼン無しでの歩行訓練を行った。訓練場所に向かう途中で既に1年生が滑って転びそうになっていた。やはり、最低限の歩き方を知っていないと危ないということを示すいい例だった。斜面を登るときはキックステップを用いる、下るときはかかとから足を下ろす、トラバースするときは斜面に近い方の足を斜面に平行に蹴り込む、といった基本の歩き方を学んだ。2~3名のグループをつくり、実際に斜面を歩きまわりながら雪上を歩く感触を確かめた。

 

 次に、アイゼンを装着して歩行訓練を行った。1年生はアイゼンの装着が初めてだったため、つけ方を把握していなかった。山に入る前に、事前にアイゼンをつける練習をしておくように指示すべきだったと感じた。アイゼンをつけないときの歩行と比べ、フラットステップでも滑らず歩けることが実感できた。

 

 雪上を初めて歩く1年生のみならず、雪山に取り組む上級生にとっても歩き方の基礎を確認する有意義な訓練だった。

 

 

 

〈滑落停止訓練〉

 

 歩行訓練の後、ピッケルを用いた滑落停止訓練を行った。最初に傾斜が緩めの斜面で雪上にピッケルを突き刺す姿勢の確認を行った。足を上げ、素早くうつぶせの態勢をつくるのは見ているよりも難しかった。その後、少し傾斜の急な斜面の下にザイルを張り、斜面を仰向けの状態で滑ってから止まる練習を15回ほど行った。雪が比較的柔らかいこともあり、ピッケルが雪面に刺さってもなかなか止まらなかった。途中で宮武さんがデモンストレーションしてくださり、見事に停止していた。やはり確実に技術を習得するためには繰り返し練習する必要があると感じた。

 

 

10:45 訓練実施斜面の下。奥がロープウェイ天神平駅、手前がリフト乗り場。

 

 

10:59 滑落停止の姿勢確認

 

 

11:14 滑落停止訓練

 

 

〈危険個所通過時のロープワーク講習〉

 

滑落停止訓練後、昼食休憩を挟んでゲレンデのリフトの終着点の先にある展望台へ向かってアイゼン歩行を行った。尾根まで登り、その尾根伝いに歩けばよいという簡単なコースだったが、霧で視界が悪かったため先頭を歩いていて少し不安だった。

 

展望台では、設置されていた柵を利用して、危険個所においてメンバーを安全に通過させるためのロープワークを教えていただいた。スリング2本を用いて簡易ハーネスを作り、カラビナ2枚(ザイルを結んだ支柱を跨ぐ際に、体が完全にザイルから離れてしまうことを防ぐために2枚用いる)でザイルとつなぐ。この訓練の前の部会で習ったロープワークをどのように実践の場で使うのかイメージできるようになった。

 

 

 

 

〈アンザイレン講習〉

 

 展望台からロープウェイの駅まで戻る際に、アンザイレンの方法を教えていただいた。3人ほどのパーティを3つ作り、スリングで作った簡易ハーネスを使ってアンザイレンした。ザイルをある程度手に巻いておき、メンバーの誰かが滑落したときはそのザイルの輪の内側にピッケルを刺すのだが、これは練習を繰り返さないととっさにはできないだろうと感じた。アンザイレンして歩いていると、パーティのメンバーに命を預けており、チームで登山をしているという感覚が非常に強かった。

 

 

13:29 アンザイレンの方法を確認

 

 

〈ツエルト講習〉

 

 ロープウェイ天神平駅前まで下りてきた後、ツエルトの張り方を教えていただいた。今までツエルトは見たことはあるが実際に使ったことはなく、持っていても意味がない状態だった。木にザイルを張る方法さえマスターしてしまえば、簡単に使うことができることがわかった。実際にツエルトの中に入ってみると、風を防ぐことができて暖かく、非常に快適だった。ビバークを行うときには非常に有効であることを身をもって体感できた。

 

 

 

 以上で全ての訓練のメニューが終了した。霧で真っ白で景色が何も見えない展望スポットで記念撮影をして、佐藤さんと宮武さんにお礼のあいさつをして解散となった。予定よりも早い時間に終わったため、帰りも土合駅から電車を使って帰った。

 

 

 

 

総評

 

 ずいぶん前から入念に計画や準備を行ってきたこともあり、悪天候のため日帰りの実施になってしまったのが非常に残念であったが、とても充実した訓練を実施することができたと考えている。実際に訓練を行ってみると、ただ山を歩いているだけでは学ぶことのできない多くのことを得ることができ、安全登山のために訓練を実施することの重要性を再認識することができた。

 

 今後も継続して訓練を実施していく必要があるのは確かだが、課題もある。まず、やはり構想段階から議題となっていた訓練の実施目的がまだまだ曖昧だったと感じている。この訓練は、夏山の雪渓歩きを念頭に置き全員が参加するものとして設定していたが、訓練実施場所が雪のある場所であることから、親から雪山への入山を禁じられている多くの部員が参加しなかった。また訓練の内容も、冬山にも取り組むメンバーにとっては全て必要なものであったが、雪山には登らない部員にとっては不要なメニュー(ピッケルを用いた滑落停止、アンザイレンなど)もあったという声が上がっていた。この点については、まだ雪山に取り組むか判断がついていない新入生にとっては、雪山がどのようなものか体験として触れる良い機会になったという意見もあり、今後議論していく必要があると感じた。

 

そして、費用対効果についても一部の部員から疑問の声が上がっていた。確かに、用具のレンタル(ヘルメット、ピッケル(部のものでは本数が足りなかった)、持っていない人はアイゼン)や交通費で計1200014000円ほどのお金がかかっている。また、ロープワークやツエルトの使い方などは部室前でも練習することが可能である。わざわざお金をかけて雪のある場所に行くなら、雪山に取り組むメンバーだけで雪山に関するメニューだけを行うというのも一つの方法ではあると感じた。これは、11月~12月頃に行う雪山参加者の訓練の内容によっても変わってくるのではないか。

 

 今後再び考えていかなければならないことはあるが、ひとまず新入生が多く参加する訓練を部として実施することができた意義は大きい。今回を契機として、今後も継続して訓練が実施されるようになるといいのではないか。

 

 

 

最後に、今回の訓練実施にあたっては、計画段階から当日のコーチングを含めて、佐藤さんと宮武さんに大変お世話になりました。改めて感謝を申し上げたいと思います。